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Channel: webDICE 連載『DICE TALK』
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日本で『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』を実践するには、手島奈緒さんに聞く

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渋谷アップリンクでの『モンサントの不自然な食べもの』トークイベントより、『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』の著者、手島奈緒さん




世界の遺伝子組み換え作物市場の90%を誇るアメリカのモンサント社のビジネス、そしてこうしたグローバル企業が中心となる現在の世界の経済構造に疑問を投げかけるドキュメンタリー『モンサントの不自然な食べもの』がDVDで発売された。これにともない、『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』の著者である手島奈緒さん、そして生活クラブ・スピリッツ代表取締役専務の白井和宏さんを迎えての記念イベントが11月16日、17日の2日間渋谷アップリンク・ファクトリーで行われた。



今回webDICEでは、この映画のテーマでもある食の安全にまつわる日本の状況について解説した『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』について、手島さんにあらためて話を聞いた。




「なんとなく食べたくない」という気持ちを大切にする



『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』で手島さんは、実際に30日間遺伝子組み換え作物でない食べものを食べ続けたらどうなるかを記録。そのなかで、日頃わたしたちが口にしている食べものがどのように作られ、流通しているのかを調査し、豊富な資料やイラストを交え、分かりやすく伝えている。



2009年まで大地を守る会に勤務の後、就農者(農家)、新規就農者向け会員募集サイト「ほんものの食べものくらぶ」を運営する手島さんは、2012年の3月に映画『フード・インク』、そして一年間中国産のものを買わないという取り組みをしたアメリカのジャーナリストによるルポルタージュ『チャイナフリー:中国製品なしの1年間』というふたつの作品に触れたのをきっかけに、2012年4月1日から非遺伝子組み換え生活をスタートさせた



「私は大地を守る会で産地まわりをしていたので、農家サイドのものの見方しかしていなかったんです。遺伝子組み換えトウモロコシや大豆が入ってきたらどうなるか、交配したらどうなるか、日本の畑で作られたらどうなるか、ということで反対をしていたんです。安全性とか危険については、いろいろな論文がありますが、科学的な根拠が薄いのと推進派の人たちにことごとく反対されている。『いま日本が遺伝子組み換え食品の輸入を解禁した1996年から17年間食べているのになんにも起きていないじゃないか』と指摘されるとすごく弱くて、安全と危険という切り口だけで考えるのはすごく難しい。だから、アプローチの仕方が間違っているのかなと、思っていたんです。

2006年に遺伝子組み換えについての記事を始めて書くことになったときに、市民バイオテクノロジー情報室の天笠啓祐さんに取材したときのことです。その際に『食べたくないという気持ちだけでいいんじゃないですか』と天笠さんがおっしゃったんです。なんとなく嫌だ、反対の根拠は健康被害を科学的に検証する、というのではなくて、人間としてなんとなく遺伝子を組み換えしたものを食べるのがいやだっていうことでいいでしょう、と。私もそれでいいかと思って、自分のスタンスはずっと『なんとなく食べたくない』という気持ちにあるんです」



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『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』より


購買者・消費者の視点で買いたくない、ということの意識を、この『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』は教えてくれる。現在の法律では遺伝子組み換え原料が全て表示されていないのに、一部に「遺伝子組み換えでない」という表示をされていることから、実際は食べていても、自分はきちんと選んでいる、食べていないと思っている人が多い。そこの分かりやすい説明や伝え方が必要なのだろう。



全てに関して情報を広く与えるという姿勢が重要



手に入れられる食材でやりくりをしていく、NON-GMO生活でいちばん大変だったところについて、手島さんは「ケーキが食べられなかったところがほんとうに、一日中ケーキのことを考えていました」と笑う。



「1週間で禁断症状から抜けましたが、辛かったです。砂糖だけじゃなくて、砂糖と脂肪分の組み合わせじゃないといけなかった。でも、脂肪分をとるための牛乳がなかったので結局なにもせず、3日後に豆乳でココアを作ったんです。そうしたら、安心できました(笑)」



この本のもうひとつユニークな点は、食品メーカーの問い合わせ室に電話して、食品の原材料について問い合わせ、◯△×というマークをつけていることだ。



「2次原料までは分別してありますと返事をもらったところは◯、△は〈やってるかどうか分からない〉とか〈現在値が分からない〉とか、はっきりしたことを言ってくれないところです」



×と△が多いなかで、カルビーなど、できるだけ非遺伝子組み換えを使用するという姿勢を見せている大きな企業も存在する。



「おすすめのNON-GMOメーカーとして『分別してある原料を積極的に選択している』ということで、カルビーに掲載して問題ないか確認をしたのです。そうしたら、カルビー中の担当者にその案件が回されたみたいで、最終的なお返事は『自分たちから積極的にそうしたことをPRしていないので、あまり宣伝したくないと思っているけれども、あなたたちが調べたことを載せるのは構わない』とのことでした。たぶん原料は頻繁に変わっていることもあり、分別した原料が入手できるのがいつまでなのか分からないところがあるからでしょう。だから、昭和産業の天ぷら粉などNON-GMOのコーンスターチが入っているものもあるけれど、その都度とるロットによって違う。相場を見ながら発注していることもあり、原料を確定できないので言えないみたいです。だけどカルビーについては、発注するときには、NON-GMO、つまり果糖ブドウ糖液糖とかデキストリンのでんぷんを、例えばさつまいも原料だったり、トウモロコシでもNON-GMOのものを発注するようにしているようです。そうしたことから、他のメーカーより確実に手間がかかっていると思います」





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『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』より



そのほか手島さんにおすすめのNON-GMOメーカーについて聞いてみると、「フェイスブックでも紹介しているのですが、いちばん反応がいいのがヒカリ食品でした。NON-GMOのケチャップとかソースとかドレッシング、ポン酢を販売しています。日常使いの食品がNON-GMOというのがいいんだろうなと思います。国産原料ではないですが、オーガニックのものを輸入して作っています。オーガニックでは遺伝子組み換え原料は使えませんから」とのことだった。



またそれぞれの食品害者の問い合わせ窓口を通して、その企業の体質を如実に感じられることもあったという。



「企業の姿勢として対応の仕方がダメでしょう、というところもありました。一方で、GM食品を使っている企業だとしても、できるだけ公開しようとする姿勢を持っているところもある。すべてのことに関して情報を広く与えますよという姿勢は、重要なことだと思います」。



この体を張った30日間NON-GMO生活、モーガン・スパーロック監督の『スーパーサイズ・ミー』(30日間マクドナルドを食べ続けた模様を撮ったドキュメンタリー)のようだが、こうしたスタイルにしたきっかけは、こうした体当たりドキュメンタリーの手法にあったそうだ。



「伝聞情報ではないので、自分が体験したことはなんでも書ける、ということと、ここに載っていることは基本的に全部公開されている情報なので、突っ込まれないんです。大地時代に編集をやっていたので、うっかりしたことを書くとつっこまれることはよく分かっていましたし、つっこみどころが多いとすぐ話題になってしまうことは分かっていますので、そういうところはすごく気をつけています。基本は『モンサントの不自然な食べもの』のマリー=モニク・ロバン監督と同じで、公開された情報を使ってうまくやれば、問題にならないんです。お客様相談室は誰が質問してもきちんと答える部署ですよね、そこにちゃんと聞いて、憶測でものを書かないようにすればいいのです」


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映画『モンサントの不自然な食べもの』より


ジャーナリストでもあるマリー=モニク・ロバン監督も『モンサントの不自然な食べもの』の撮影にあたり「私自身がモンサントから告訴されるのを避けるため、情報源の大半はインターネット上で入手可能なものにしました」と語っている。この本で紹介されているやり方は、普通の消費者が世の中にある情報を正しく利用すればそれは市民にとっての武器になる、ということのお手本になっているになっている。




実際に亀田製菓の問い合わせ窓口で聞いてみた




編集部は今回、手島さんの手法にならい、編集部は亀田製菓に「亀田の柿の種」の原料について問い合わせをしてみた。対応してくれた担当者から聞いた結果は以下のとおりとなった。






NON-GMOか調べてみた[webDICE編]

柿の種(株式会社亀田製菓)


判定:△


GMを積極的に使用してはいないが、分別されているものは使用していない。

(編集部注:遺伝子組み換え不分別=遺伝子組み換え農産物とそうでない農産物を分別せずに使っている、つまり遺伝子組み換えが含まれる可能性がある)



原材料名

ピーナッツ(ピーナッツ、植 物油脂(大豆を含む)、食塩)、米、でん粉、しょうゆ(小麦・大豆を含む)、砂糖、カツオ節エキス、たんぱく加水分解物(卵・小麦・大豆・鶏・豚を含 む)、食塩、こんぶエキス、加工でん粉、調味料(アミノ酸等)、ソルビトール、パプリカ色素、カラメル色素、香辛料抽出物、乳化剤



⇒植物油脂

ピーナッツを揚げる時に使用しているもの

アルゼンチン、中国産のもの。



⇒でん粉

トウモロコシ、産地はアメリカ。



⇒たんぱく加水分解物

8種の原料からなる、大豆はアメリカ産のものを使用。



⇒加工でん粉

ばれいしょが原料、北海道産。



⇒乳化剤

大豆レシチンで、産地はアメリカ。


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手島さんによると、問い合わせるときのポイントは「植物油脂」と「でん粉」、「乳化剤」、「果糖ぶどう糖液糖」。これらが原料に含まれているとGM原料が使われている可能性が高い。「デキストリン」「たんぱく加水分解物」「加工でん粉」そして調味料のアミノ酸の原料はでん粉なので、「これらの由来でん粉はなんですか」と聞くと、原料を教えてもらえるとのことだった。



私たちがそれぞれ好きなお菓子についてお客様センターに電話することで、消費者が共通で食べものの原料についての情報をシェアすることができる。そして「普段食べているお菓子もできるだけNON-GMOを選びたい」といった意識が、実際の購買活動に反映されれば、よりよい食生活のための可能性がさらに開けてくるのではないだろうか。



(2013年11月16日、渋谷アップリンクにて 取材:松下加奈、構成:駒井憲嗣)
















手島奈緒 プロフィール



鳥取県生まれ。デザイン学校卒業後デザイン事務所勤務を経て1993年自然食品宅配の老舗「株式会社大地を守る会」に入社。広報室・青果物の仕入れを担当。2009年大地を守る会退社後、地域活性を行うNPO法人を経て、食べるひとと作るひとを繋ぐ「ほんものの食べものくらぶ」を設立。新規就農者支援のボランティアサイト「新鮮野菜.net」に監修者として参加中。














手島奈緒『いでんし くみかえ さくもつ のない せいかつ』



ISBN:978-4844136460

価格:1,260円

版型:210 x 148ミリ

発行:雷鳥社

発売中





★購入はジャケット写真をクリックしてください。Amazonにリンクされています。












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DVD『モンサントの不自然な食べもの』

発売中




監督:マリー=モニク・ロバン

原題:Le monde selon Monsanto

製作国:フランス=カナダ=ドイツ(2008年)

言語:フランス語・英語/日本語字幕付き

商品仕様:1層ディスク/ステレオ

尺:本編108分+特典約10分

品番:ULD-623

価格:3,800円(税抜)

発売・販売:アップリンク

協力:作品社、大地を守る会、食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク、生活クラブ生協、株式会社アバンティ、日本オーガニックコットン協会

映画公式サイト:http://www.uplink.co.jp/monsanto/





DVD特典映像

■マリー=モニク・ロバン監督からのビデオメッセージ(3分33秒)

(2012年6月14日に衆議院議員会館で開催された“映画を観て遺伝子組み換えとTPPを考える院内学習会”より)【画像提供/IWJ】

■ダイジェスト版『モンサントの不自然な食べもの』(6分18秒)




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▼映画『モンサントの不自然な食べもの』予告編


[youtube:PO7RmRVZs6A]

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