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ミランダ・ジュライの素晴らしき映像世界『ザ・フューチャー』DVD 11/22発売

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『ザ・フューチャー』撮影中のミランダ・ジュライ ©2011 Aaron Beckum




映画が始まったとたん引き込まれる、ファンタジックかつキュートな世界観。アーティストとしても高い評価を受けるミランダ・ジュライが監督・脚本・主演をつとめ、今年1月に日本公開され話題を呼んだ『ザ・フューチャー』のDVDが11月22日発売になった。




付き合って4年目、35歳になるカップルのソフィーとジェイソンに訪れた、小さな危機――。居心地の良さが時として不安になる、すべての女性が経験する恋愛の現実を、シュールな感情表現を織り交ぜ描き出したミランダ・ジュライへのインタビュー。






「肝心なのは、真実を表現し、人間は自由なんだと確認し、それまでなかった世界を創り出すこと」





──本作のアイデアはどこから?



最初の映画[※2005年制作の『君とボクの虹色の世界』]を撮ったあと、すぐに次の映画に取りかかる気持ちになれませんでした。だから短篇小説集を書いて、“Things We Don’t Understand and Definitely Are Not Going To Talk About”というパフォーマンスの台本を書きました。『ザ・フューチャー』の原型ともいえるパフォーマンスです。やはり情事を扱った作品でしたが、観客の中から私が選んだ本物のカップルに演じてもらいました。ツアー公演にしなかったのは、毎晩カップルを選ぶのが髪の毛が逆立ちそうなほど大変だったからです。運よく何事もなかったけれど、間違いが起こる恐れもたくさんありました。そうこうするうちに次の脚本を書く準備が整って、もっと手の込んだ形でつくってみたいという欲が出てきました。



最初のコンセプトをぐんと発展させて、最終的な脚本を仕上げたら、人形のピノキオと生身の少年くらい、全然違うものになったのです。象徴として描いていた要素は、すべて具体的なものに置き換えました。何よりも大きな変化は、情事というものが愛情や欲望とは関係ないと、私が理解し始めたことです。ソフィーは自分が属する次元を捨てたいと願って浮気をしてみました。まるで、二次元の世界で生きたり、魂なしで生きたりできると思っているかのように。それは、有名人が味わう感覚に似ています――他の人たちの注目を浴びて輝くようになると、自分で自分を燃え立たせる大変さと向き合わなくなるのです。



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映画『ザ・フューチャー』より




──タイトルは制作中の“Satisfaction”から“The Future”に変わりました。なぜ、最終的にこちらがふさわしいタイトルだと思ったのですか? また、この映画は未来をどんなふうに描いていますか?



以前の私は、満たされることについて重苦しく考えていました。例えば、人はなぜ死ぬまで欲望を感じ続けるのか、とか。でも、次第にこの言葉が思いのほか軽くて、単純なのかもしれないと思えてきたのです。タイトルに必要なのは一つの単語、それもよく使われるものがいいということは分かっていたから、インターネットでごくありふれた単語を探してみました。すると、過去、現在、未来という言葉が見つかりました。未来ほど複雑で、希望と恐れにあふれる言葉はありません。私たちは未来について一生懸命考えるけど、決してそこに到達しません。未来はいつも新しいけど、それが訪れる時には必ず今よりも歳をとっています。若いカップルにとって、未来は当然、不安だらけ。でも、実際にそれを2人で迎える過程、共に年齢を重ねることに深い意味があるわけです。



──あなたは小説集も発表していますし、アートや舞台の世界でも活躍していますね。脚本執筆は、他の媒体での創作活動とどう違いますか?



脚本を書くのは、伝言ゲームのスタート地点になるようなものです。伝言が繰り返されるうちに収拾がつかなくなるから、あまり複雑な話はしたくありません。それでも感情を描きアイデアを形にしようとすると、どうしても複雑になっていってしまいます。フィクションというのは、賢い語り手が、賢そうなアイデアを理路整然と説明する、というようなものではありません。伝えたいことは全部、自分が作り出す小さな世界に生きる人物たち、その場所、そして小道具で物語らなくてはなりません。映画の場合はパフォーマンスのように“今”を観客と共有するわけではないけれど、もっと大勢に見てもらうものなので、広く伝わりやすいかどうかが大切です。もちろん、肝心な部分はどんな媒体でも同じで、真実を表現し、人間は自由なんだと確認し、それまでなかった世界を創り出すことです。



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映画『ザ・フューチャー』より




──なぜ、今回の作品でシュールな表現に飛び込んだのですか? 文学やアートからの影響でしょうか?



最初の『君とボクの虹色の世界』だけを観た人は急に変わったように思うかもしれないけれど、非現実的なところがないあの映画は、私の作品の中ではむしろ異色です。私のビデオ作品、短編小説、パフォーマンスのほとんどすべてに、抽象的だったり、SF的な要素が含まれています。現実にあったことを語る時も、多少、大げさに言うものです。そうしないと、その出来事の深さや大きさが伝わらないからです。ソフィーは過去に取り憑かれているように感じていて、それはあまりに痛切でリアルな感覚であるため、顔の表情だけじゃなく映像全体で表現したかったのです。過去は痛々しく、容赦なくソフィーににじり寄ってきます。



──インターネットと、それが人間関係に及ぼす影響は、前作と今作で共に大きなテーマとなっています。この作品のソフィーとジェイソンが直面する“ネット依存”状態に、あなたはどう対処していますか?



インターネットなしでも一日過ごせるということを忘れないように毎日頑張っています。そういう努力はとても新鮮で面白いです。私の知っている人はほとんどが同じ悩みを抱えています。すごいことだと思います。でも、観客に近づく方法を常に探している表現者としては、インターネットは便利でもあります。ファンジンとVHSと郵便で革命を起こしたいと願った20歳の私が、どこかにずっといるからでしょう。だから、ツイートしたり、ダイレクトに反応が返ってきたりする状況に、つい興奮してしまうのです。それでも(そしてこの点が大事なのだけれど)、じっくり考えて、時間をかけて何かに取り組もうとする自分を阻むようなものは大嫌いです。だから、ツイッターもフェイスブックも自分のサイトも、ゆっくりやっています。ソーシャルネットワークという意味では、あまり意味がないけれど。



インターネット・カルチャーのポイントは、見てもらうことと、反応してもらうことです。それは女性や女の子の得意分野ではないかと思います。ティーンエイジャーの女の子は、他人に見られて自分の力を意識します。“パパやママが私をちゃんと見てくれない”という、ありがちな悩みを抱えている人は、見られる快感に簡単にハマってしまいます(YouTubeで“部屋で踊る私”を検索してみれば、それがよく分かでしょう)。見られることはある意味、生きていく苦しさからの解放です。見られている間は、存在しなくていいから。この映画の中で、私はインターネットのそういう側面を逆行分析して解き明かしたのかもしれません。ソフィーは責任を背負い込む前に、ダンスの映像をYouTubeにアップしようとする。子供のように見つめられる最後のチャンスだから、うまくできないと分かると落ち込み、思い詰めてしまう。やがて本物の子どもと向き合うわけですが、その時になってようやく諦め、シャツをかぶって踊り、大人になるのです。すべて意識して脚本を書いたか? いいえ。私は無意識に書くタイプです。ただ、前作が終わってから、こういう問題と格闘してきました。



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映画『ザ・フューチャー』より





──モラトリアムの終わりを、なぜ、赤ちゃんではなくネコで表現したのですか?



ある日、書こうとしても、どうも筆が進みませんでした。自分は何もできない、ほとんど人間失格のバカなんじゃないかと、気が滅入りました。だから、考えを切り替えることにしました。“オッケー、ここから書くのよ。何もできない、ってどんな感じ?”そして誰のセリフかも考えずに、長くて少し悲しげな、とぎれとぎれのモノローグを書いたのです。翌日、うちの前で奇妙な事故がありました。歩道に乗り上げた車がネコを轢いたのです。プロデューサーのジーナ・クォンが現場を見ていました。私はネコの死骸を片づけながら、ジーナに言いました。“このネコの供養をしなきゃね”。そんな出来事とモノローグが結合して、パウパウになったのです。



──あなたは、映画の中の人物にどのくらい近いですか? ご自身にあてて書いた役と、他の役では違った形であなた自身が反映されているのですか?



前作も今作も、脚本の時点では誰が演じるのか決めずに書きましたが、ソフィーだけは最初から私の役だと思っていました。ビンゴゲームの真ん中にあるフリースポットのような位置づけです。その一点を中心にすべてを作っていったので、トーンやキャストを決め、一つの世界を作り上げるのに苦労はしませんでした。ソフィーは私だと感じる瞬間もあったけれど、むしろこの映画全体に私が反映されています。音楽も付けて映画として完成した作品は、私という人間の肖像画になっています。個々の登場人物は、どっちかというと写真のような感じだと思います。



──自信を持てずに苦しむアーティストというモチーフは、あなたのビデオ作品や、前作『君とボクの虹色の世界』、そして今作に至るまで、繰り返し登場しています。苦しみは乗り越えられるものなのでしょうか? それとも、苦しむプロセスそのものがポイントなのですか?



プロセスはとても面白いものだし、乗り越えた気がしたとしてもそれは一瞬だけで、闘いは終わりません。どの作品も、次のプロジェクトへ通じるドアのようなものです。それに、苦しむのはアーティストだからではなくて、生きていくうえでごく当たり前のことだと思います。生きているとスランプに陥ったり、心が縮こまったり、希望が膨らんだり、自信をなくしたり、突破口が見えたりする。同世代の女性もみんな、とても優秀なのに苦しんでいる。やりたい仕事もできないまま諦めて子供を持つか、夢を実現する代わりに子供を持たないまま40歳になるか。もちろん、そこまで単純ではないけれど、大概そういう感じだと思います。私も同じジレンマに陥っている、というほどではないけれど、でもとても身につまされる話です。だからソフィーをああいう設定にしたのです。子供のダンスの先生だったソフィーは、自分のダンスのために仕事を辞めるけど、いったん辞めてしまうとその仕事にさえ復職できずに降格される(これはホラーです)。



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映画『ザ・フューチャー』より




──アーティストとしての仕事の中で、映画をどう位置づけていますか?



ジャンルを問わずアーティストとして活動するつもりです。執筆、美術品の創作、身体表現、映画。いつもいくつか同時進行しています。つまり『ザ・フューチャー』は『君とボクの虹色の世界』の次の作品ではなくて、短編小説集の次にあたります。あるいは、横浜トリエンナーレに出品したインタラクティブな作品“The Hallway【廊下】”の次です。“The Hallway”は時間をテーマにした作品で、熱烈なファンでなければ作品全部を追いかけはしないでしょうから、私の進化は私にしか見えないですね。

──キャスティングはどのように決めましたか? プロの俳優であるハミッシュ・リンクレイター、デヴィッド・ウォーショフスキー、そして子役のイザベラ・エイカーズと、素人のジョー・パターリックを組ませた意図は?



ジャンヌ・マキャシーと一緒にキャスティングしました。私も彼女も、ハミッシュとデヴィッドは最初から想定していました。実際に会ってみると、この人たちとしか思えず、もう探さなくていいと感じました。それでも、当てはまる年齢の俳優のほとんど全員に会って、よく検討してから決めました(つまり、選択肢は多ければいいというわけではないのです)。一方、ジョーの起用は全く違った経緯でした。映画とは別のプロジェクトですが、“ペニーセイバー”というフリーペーパーに広告を載せて中古品を売っている人たちを集め、インタビューをして写真を撮る許可を取っていました。ジョー・パタールックは、そのプロジェクトで出会った素晴らしい人たちの一人です。当時ちょうど脚本を書いていて、登場人物が訪問販売で木を売っている設定でした。彼は自分の小さな世界を飛び出して、知らない人の家に入っていきます。ある時、突然、私のプロジェクトをその役に活かせると気づきました。最初は、ペニーセイバーの人たち全員に本人役で出てもらおうと思ったのですが、スクリーンテストでうまくいったのがジョーだけでした。ビデオカメラを構えて、出会った時の様子を再現してほしいと頼むと、ジョーはアドリブでやってくれたのです。セリフがとても自然で、撮影ということを忘れてしまうほどだったし、撮り直しにも前向きに応じてくれました。それ以上に、人間的に素晴らしくて、役を書き加えたいという気持ちになり、触発されて物語も変わりました。ジョーは奥さんのために60年もエッチな詩を添えたカードを手作りしてきたりして、タフで大きな心の持ち主でした。そして私が映画を撮り終えた翌日、感謝祭の日に亡くなりました。










ミランダ・ジュライ プロフィール



1974年米国バーモント州生まれ。パフォーマー、ミュージシャン、小説家などマルチに活躍するアーティスト。映画監督としては長編第一作『君とボクの虹色の世界』(2005年)がカンヌ国際映画祭でカメラドールを受賞、サンフランシスコ国際映画祭、ロサンゼルス映画祭では観客賞を受賞した。長編第二作の本作『ザ・フューチャー』は、サンダンス映画祭でのプレミア上映やベルリン国際映画祭のコンペティション部門への出品など、世界中の映画祭で高い評価を受けた。コンテンポラリー・アーティストとしてもニューヨーク近代美術館、グッケンハイム美術館、ホイットニー美術館の展覧会に出品するなど活躍。また、フランク・オコナー国際短篇賞を受賞した小説集「いちばんここに似合う人」(岸本佐知子訳/新潮社刊)は、20ヶ国で翻訳され、世界中の若い女性の間で圧倒的に支持されている。













the Future for webDICE


『ザ・フューチャー』DVD

2013年11月22日(金)発売



★特製スリーブケース&ステッカー付き!



監督・脚本・主演:ミランダ・ジュライ

音楽:ジョン・ブライオン

出演:ハミッシュ・リンクレイター

        デヴィッド・ウォーショフスキー

        ジョー・パターリック

原題:the future

製作:2011年(ドイツ=アメリカ)

日本公開日:2013年1月19日

日本語字幕:西山敦子

配給:パンドラ

商品仕様:本編91分+特典24分/5.1ch/吹替えなし

品番:DABA-4530

定価:4,800円(税抜)





DVD特典映像

■キャストのインタビューを含むメイキング(16分27秒)

■未公開シーン(3分)

■オリジナル予告編&日本語版予告編




★アマゾンでのご購入はこちら



渋谷アップリンク・マーケットでは、本作DVDをご購入の先着10名様に『ザ・フューチャー』劇場公開時のポスターをプレゼント!










▼映画『ザ・フューチャー』予告編



[youtube:3FKL7_2Mdvs]

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