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デ・パルマ監督が真骨頂のサスペンスに回帰した理由「夢の世界に完全犯罪の手順を織り込む」

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映画『パッション』のブライアン・デ・パルマ監督



ブライアン・デ・パルマ監督が真骨頂と言えるサスペンスのジャンルへ復帰した『パッション』が10月4日(金)より公開される。熾烈なアイディア競争が展開されるスマートフォンの広告業界を舞台に、キャリアアップを狙う重役と有能な部下をめぐる攻防が殺人事件へと発展していく様をスリリングに描いている。レイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスという現在勢いのあるふたりの女優を迎え、『殺しのドレス』『ミッドナイト・クロス』などの1980年代の代表作を彷彿とさせる流麗なカメラワークを特徴とする映像美と倒錯的でセクシャルな描写、そしてトリッキーなストーリーテリングを披露している。フランスのアラン・コルノー監督『ラブ・クライム 偽りの愛に溺れて』のリメイクとして完成した今作について巨匠が語った。




自分の映画で罪悪感を抱く状況を繰り返し描いている



── この物語のどのような点に惹かれたのですか。




物語に引きつけられた。サスペンス・スリラーだったからだ。僕にとってビジュアル的な語り口にもってこいのジャンルだ。楽しめる要素がたくさんあると思った。それに22年前の『レイジング・ケイン』(92)以来、このジャンルは手がけていなかったからね。



オリジナル版のキャラクターたちは好きだが、僕は異なるやり方で中心の殺人事件を浮き彫りにしたいと思ったんだ。常に驚きがあるように脚本を書き換え、誰が殺人犯なのかわからないように多くの容疑者を登場させた。さらに別のことが起こっているときに、観客には異なるものを信じ込ませるようなトリックもかなり使っている。ふたりは競争心が強く、相手を思い通りに操ろうとするところがある。物語が進むにつれ、彼女たちは相手に対してあらゆる種類のパワープレイを使っていく。官能プレイや心理プレイを使い、自分のポジションを固めようとするんだ。



webDICE_『パッション』メイン画像

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA


── なぜあなたはドッペルゲンガーというテーマにこだわるのですか。



自分でもわからない。僕は自分の映画で罪悪感を抱く状況を繰り返し描いている。例えばレイチェル・マクアダムス演じるクリスティーンが双子の姉クラリッサの事故に責任を感じていると言うようにね。それは僕が幼かった頃の家族に原因があると思う。僕の家族には、弱い人間に対して容赦しないところがあった。僕の父と母と兄ブルースがそうだった。僕は10歳でもうひとりの兄のバートは12歳だったが、彼はとても繊細で弱かった。僕はそうした怒りから彼を守りたかったが、できなかった。子供だったからね。それが罪悪感になっているんだ!



クリスティーンは自分のセックスの相手に、自分の顔に似た仮面をつけさせる。それによって彼女は、常に自分自身と愛の営みを交わしていることになる。仮面は彼女の謎めいた双子の姉妹なんだ。その姉妹が本当に存在していようといまいとね。



webDICE_『パッション』サブ1

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA



何が真実か目覚めるまでわからない夢を見ているような映画




── 脚本のなかのポイントはどのようなものでしたか?



僕はいつも眠っている間に、夢の中で自分の映画の問題を解決している。この映画は何が真実で何が違うのか、目覚めるまでわからない夢を見ているような感じだ。それに犯罪の手順を、非常に洗練された夢の世界に織り込んでいくことで楽しさが倍増するんだ。完全に謎が解明するまで、誰が殺人に成功したのかわからないように組み立てた。それこそがミステリーのあるべき姿だからね。



オリジナル版のアラン・コルノー監督は、キャラクター間の性的な惹かれ合いについて避けて通っていた。だがレイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスは、それをストレートに演じたんだ。僕はふたりに“キスして、エロチックに”などとは指示していない。彼女たちがそうしただけだが、とても効果的だったよ。レイチェルとノオミは『シャーロック・ホームズ シャドウゲーム』(11)で共演し、安全地帯から危険なゾーンに足を踏み入れることができるほど、お互いを熟知していた。ふたりは何事も恐れずに挑戦した。とてもエネルギッシュで心を揺さぶる姿勢だったよ。



webDICE_『パッション』サブ2

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA



── レイチェル・マクアダムスとノオミ・ラパスについては、それぞれどのように評価していますか?




レイチェルはとてもセクシーだ。ものすごく邪悪な女性を楽しんで演じていたよ。女優はクリスティーンのように操るのがうまいタイプの女性を演じたがらない傾向にあるが、レイチェルは全力を尽くして演じてくれた。そしてノオミはとても恐ろしい。彼女の頭の中で何が起こっているかわからない。彼女なら本当に人を殺せると思えてしまうんだ。



webDICE_『パッション』サブ3

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA


僕は男性より女性を撮影するほうが好きだ




── クリスティーンとイザベルのライバル意識を象徴するシーンとして、クラシックバレエ「牧神の午後」が挿入されます。



完璧なバレエだ。死の接吻について描いている。イザベルは死にゆく者にキスするマフィアのボスのように、クリスティーンにキスをする。ドビュッシーの有名な楽曲に基づくジェローム・ロビンスの振付では、イザベルがクリスティーンを冒涜するのと同じように、ダンサーが突然バレリーナの頬にキスし、ある意味そのバレリーナを冒涜するんだ。そのバレエの舞台には3方向に壁があり、ダンサーはスタジオの鏡の壁を覗き込んでいるかのように観客と対峙する。それによって、彼らにカメラをまっすぐ見てもらうことができ、4番目の壁のルールを破り、そのシーンに奇妙な雰囲気を醸し出すことができた。アルフレッド・ヒッチコック監督も『パラダイン夫人の恋』(47)のような映画で、時折“一人称のカメラ”を用いている。のちにイザベルが警察に逮捕されたときも、尋問シーンを最大限に生かすためにその手法を再び使った。



誰かが殺される設定はいつでも非常に難しい。通常はその家の周りに緊張感と静けさが漂うが、それは誰もが何百万回も見てきたものだ。そこで僕はスクリーンを分割するという異なる手法を選んだ。これは僕がしばらくやっていなかった方法だ。非常に美しいバレエで観客を夢中にさせながら、一方の画面ではクリスティーンが切りつけられる。一方の画面は非常にロマンティックで、片方の画面は非常に暴力的という並列に対して観客がどう反応するか、まったくわからなかったが、僕はその奇抜さが気に入っている。何が起こるかわからないまま、危険地帯にいるような感覚があるんだ。


webDICE_『パッション』サブ4

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA



── 今回撮影監督には『私が、生きる肌』などで知られるホセ・ルイス・アルカイネを起用しましたね。



ホセは撮影の古典を学んでいるから、即座に僕がほしいものがわかるんだ。それに彼は女性の撮り方を知っている。女優を美しく見せる方法を本当に理解しているカメラマンはほとんどいない。でも、それがこの映画では極めて重要だった。さらにノワール映画をカラーで撮影するのは特に難しい。ホセのおかげですばらしい映像になったよ。何度も繰り返し言っているように、僕は男性より女性を撮影するほうが好きだ。この映画には裸になることを恐れない、目を奪うほど美しくゴージャスな女性がふたりも登場する。これは女性を描いただけでなく、女性のための映画なんだ。だからこそ僕は、この映画をエレガントに抑制の効いた作品にしたかった。さらにこの物語では暴力も描かれるから、意図的に露骨な表現を避けたんだ。



登場人物が働く多国籍企業のタワービルの不毛な内観や、クリスティーンの洒落たアパートや寝室の内観は、すべてベルリンで撮影された。この街は非常に経験豊かなスタッフを提供してくれたばかりでなく、フランク・ゲーリーの現代的幾何学研究に基づいて建てられたDZ銀行や、1914年に建てられた重厚なドーム型のボーデ博物館などの建築物が存在する都市でもある。



webDICE_『パッション』サブ5

映画『パッション』より  © 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA



── 登場するCMも実際に製作されたんですよね。



ネット上で人気のCMを偶然見つけたんだ。オーストラリア人女性ふたりが、ひとりの後ろのポケットに携帯を突っ込んで街を練り歩き、彼女のお尻を見ている人たちの写真を撮りまくる。それをインターネットに投稿し、何百万人もの人が見た。ふたりの女友だちが楽しんでいるように見える作品だが、実はそれは賢い広告会社の重役が作った電話のCMだとわかった。だからこの映画で、アイデアの天才イザベルと彼女の助手ダニを使ってまったく同じことをやってみたんだ。



(『パッション』オフィシャル・インタビューより転載)










ブライアン・デ・パルマ プロフィール



1940年、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。コロンビア大学在学中に映画の魅力に目覚め、卒業後、本格的に映画製作に乗り出す。1963年から『御婚礼/ザ・ウェディング・パーティー』(69・未)に取り組むかたわら、ニューヨークを拠点にしてドキュメンタリーを製作。駆け出し時代のロバート・デ・ニーロと組んだ『ロバート・デ・ニーロのブルー・マンハッタン/BLUE MANHATTAN II・黄昏のニューヨーク』(68・未)でヴェネチア国際映画祭銀獅子賞を受賞し、フィルムメーカーとしての足場を固めた。その後、移住先のハリウッドで挫折を経験するが、ニューヨークで再起を図った『悪魔のシスター』(73)が一部で絶賛され、続く『ファントム・オブ・パラダイス』(74)もカルト的な支持を獲得。スティーヴン・キング原作の超能力ホラー『キャリー』(76)の成功で人気監督の仲間入りを果たした。『愛のメモリー』(76)『フューリー』(78)『殺しのドレス』(80)『ミッドナイト・クロス』(81)『ボディ・ダブル』(84)で披露した華麗なるサスペンス演出ゆえに“ヒッチコックの後継者”と呼ばれる一方、『スカーフェイス』(83)『アンタッチャブル』(87)『カジュアリティーズ』(87)などの娯楽大作や問題作を発表。往年のTVシリーズのリメイク『ミッション:インポッシブル』(96)でトム・クルーズと組み、世界的なヒットに導いたことでも知られている。そのほかの作品には『虚栄のかがり火』(90)『レイジング・ケイン』(92)『カリートの道』(93)『スネーク・アイズ』(98)『ミッション・トゥ・マーズ』(90)『ファム・ファタール』(02)『ブラック・ダリア』(06)ヴェネチア国際映画祭監督賞を受賞した『リダクテッド 真実の価値』(07)などがある。











映画『パッション』

10月4日(金)よりTOHOシネマズみゆき座他、全国ロードショー



クリスティーンは、野心を隠さず、狡猾さと大胆な行動で国際的な広告会社の重役へと登り詰めた。アシスタントであるイザベルは、当初は憧れを抱いていたが、手柄を奪われ、同僚の前で恥辱を受け、彼氏には裏切られ、それらすべてをクリスティーンが裏で糸を引いていたと知った時、殺意が芽生え、遂に殺害を決意する。しかし、その計画は自分自身が不利になるような証拠を構築した矛盾に満ちたものだった……。実行の日、イザベルはバレエに出掛け、一方のクリスティーンは誘惑を示唆するような招待状を受け取る。相手は不明だがサプライズを好むクリスティーンは、自宅の寝室で裸になり、この秘密の愛人との出逢いを心待ちにするのだが……。野心、欲望、嫉妬が渦巻く世界。美しい化粧の下に潜む殺意と情熱、その素顔。果たしてイザベルは復讐を遂げたのか?謎が螺旋状に積み重なり合う殺人ミステリーの結末とは?女の諍いに運命の女神は誰に微笑みかけたのか─。








監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ

出演:レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト、ポール・アンダーソン、ライナー・ボック、ベンジャミン・サドラー、ミヒャエル・ロチョフ

製作:サイード・ベン・サイード

共同製作:アルフレッド・ウルマー

撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ

編集:フランソワ・ジェディジエ

音楽:ピノ・ドナッジオ

衣装:カレン・ミューレル=セロー

音響:ニコラ・カンタン

美術:コーネリア・オット

原題:PASSION

2012年/フランス、ドイツ/英語、ドイツ語

101分/カラー/R15+/ビスタサイズ/ドルビーデジタル

配給:ブロードメディア・スタジオ

© 2012 SBS PRODUCTIONS - INTEGRAL FILM - FRANCE 2 CINEMA





公式サイト:http://www.passion-movie.jp

公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画パッション/576053835767388



▼映画『パッション』予告編




[youtube:m1eVXkt-y2k]

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