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栗原類、ロウ・イエ監督に新作『二重生活』についてファン目線で終始質問攻め!

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ロウ・イエ監督(右)と栗原類氏(左)




モデルの栗原類氏が、26日、渋谷アップリンクで行われた映画『二重生活』のトークイベントに登場。憧れのロウ・イエ監督に「俳優とのコミュニケーション方法」や「舞台俳優と映画俳優の違い」など積極的に質問を浴びせ、演技に対する意欲を垣間見せた。また、この日は司会進行役として、映画ライターのよしひろまさみち氏も出席した。





自分の理想のためなら犠牲者も厭わない、

人間らしい「闇」と「欲望」に驚嘆(栗原氏)



本作は、天安門事件を扱った『天安門、恋人たち』で映画製作・上映禁止処分を受けたロウ監督が、禁止令解除後、5年ぶりに中国で製作した衝撃のメロドラマ・ミステリー。経済発展が著しい武漢市を舞台に、事故死した女子大生、彼女と最後に接触した二つの家庭を持つ男、その妻と愛人が織り成す複雑な物語がスキャンダラスに展開する。



栗原類(以下、栗原):登場人物たちの行動が、自分の理想のために人を犠牲にするという人間らしい「闇」と「欲望」が凄く出ていて素晴らしかったですね。中国の今の日常が監督の表現したいヴィジョンであることがはっきりしている反面、この映画は、果たして現実なのか、フィクションなのか、観る側を構えさせるようなところも深いと思いました。



ロウ・イエ監督(以下、ロウ):この話は、ある女性が書いていたブログが基になっているのですが、劇中に登場するさまざま人物は、今の中国の日常の中で話題になっているタイプの人たちばかり。例えば、お金持ちのボンボンであったり、愛人であったり、遊びで誰とでも付き合うようなイマドキの女の子だったり。そういう人たちを映画の中に登場させることによって、現代中国を見渡せるような作品にしたいと思ったんです。




映画『二重生活』より

映画『二重生活』より



栗原:これは僕が感じたことですが、俳優のカメラ目線が気になって、観ている僕たちが映画の中にいるような、第三者として存在しているかのような臨場感を味わいました。また、『スプリング・フィーバー』もそうでしたが、音楽がほとんどなくて、周りの雑音や環境音だけで表現されている。これも映画をよりリアルに表現するために意図されたことなのですか?



ロウ:そうですね。ドキュメンタリー・タッチで人物を描くことによって、その人物が置かれているリアルな境遇を表現したかった。例えば、幼稚園のシーンでは、実際の幼稚園の生活の中に俳優を紛れ込ませましたが、幼稚園自体は演出ではなく、いつものスケジュールで自然に生活が営まれている。あるいは、夫と子供の帰りをキッチンで迎える本妻役のハオ・レイは、20分前から実際に食事を作っていて、すでに3品の料理が出来ていた。つまり、そこまで生活のリアリティを追求して作っているわけですが、私のこうしたやり方に俳優たちがよく対応してくれたと思います。



よしひろまさみち(以下、よしひろ):監督は結構ムチャブリするから(笑)、俳優の方から意見されたり、ディスカッションになったりしませんか?



ロウ:いつも必ず俳優たちと事前にミーティングをやるんですが、今回はクランクインの1週間前から集まって、台本の読み合わせをしながら理解を深めていきました。ミーティングには、俳優のほかにカメラマンや照明さんなどスタッフも参加するので、1度映像で撮ってみて、現場の雰囲気を少し出してみたりしますね。ダメな意見は採用しませんが、いい意見の時はどんどん脚本を書き直しますよ。




栗原さん

ロウ・イエ監督(右)、栗原類氏(中央)、よしひろまさみち氏(左)


私が役者に求めるのは、演じるのではなく、

その役に成り切って生きること(ロウ監督)



瞬きもせずロウ監督の話に耳を傾ける栗原氏。近年、自身が舞台などにチャレンジしていることもあるせいか、俳優の話になると、さらに興味津々の様子を見せ、質問にも熱が入る。



栗原:舞台を得意とする俳優を映画で指導するのは、どんな感覚なのでしょう。やはり、難しいものですか?

ロウ:映画と舞台では、演技に求めているものが全く違うので、舞台の方法を映画に持ち込むとさまざまな問題が生じてくる。私が求めているのは、『役者は演じるのではなく、その役に成り切って生きる』ということ。今回は、しばらく中国を離れていたので、俳優探しから始めましたのですが、舞台で活躍していた愛人役のチー・シーも、最初は戸惑っていたものの、すぐに私のやり方を理解してくれました。



よしひろ:そういえば、ロウ監督は、5年間の禁止令を受け、海外での映画製作を余儀なくされた。一方、栗原さんは、日本を母国に持ちながらニューヨークで育った経験がある。いったん母国から離れて過ごすと、中国であったり、日本であったり、母国を客観的に観察することができるのでしょうか?



栗原:それは人によると思いますが、僕の場合は半年ニューヨーク、半年東京というサイクルの生活だったので、ギャップはまったくなかったですね。



ロウ:確かに一度離れて母国を見直すと、別の視点で見ることもできますが、忘れてしまうことも結構ありますね。



映画『二重生活』より

映画『二重生活』より


よしひろ:僕はこの映画を観て、現代中国の「闇」を浮き彫りにするのがうまい監督だなって思ったんですが……今、中国で一番大きな問題は何だと思いますか?



ロウ:中国には社会的問題がいっぱいありすぎて、一言では言えませんが、おそらく、今年大きな問題になっていることも、来年にはまた別の問題が発生している。そういうめまぐるしい社会の中で暮らしていると人間は疲れますよね。だからこそ、人と人との関係性が大切になってくるんだと思います。




本作は、武漢という地方都市が舞台となっている。本妻が住む富裕層のエリアと、愛人が住む貧困層のエリアが水路で区切られ、そこに架けられた大橋を主人公ヨンチャオがうつろな表情で車を走らせる。『二重生活』を最も象徴するシチュエーションだ。自分はいったい何を求めているのか、自分はいったい何をやりたいのか、目的も置かれている状況も、全てを見失ってしまったヨンチャオ。めまぐるしい時代の変化に疲弊しながら、いつしか大切な人との関係性が歪んでしまった男の象徴なのかもしれない。



(2015年1月26日、渋谷アップリンクにて 取材・文・写真:坂田正樹)











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映画『二重生活』

新宿K's cinema、渋谷アップリンクほか

全国順次公開中




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監督・脚本:ロウ・イエ

脚本:メイ・フォン、ユ・ファン

撮影:ツアン・チアン

編集:シモン・ジャケ

音楽:ペイマン・ヤズダニアン

出演:ハオ・レイ、チン・ハオ、チー・シー、ズー・フォン、ジョウ・イエワン、チャン・ファンユアン、チュー・イン

配給・宣伝:アップリンク

原題:Mystery(浮城謎事)

2012年/中国、フランス/98分/1:1.85/DCP



公式HP:http://www.uplink.co.jp/nijyuu/






▼映画『二重生活』予告編

[youtube:Z58mbWAgVMY]

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