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Channel: webDICE 連載『DICE TALK』
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ディープな大阪シンセサイザー・シーンを探るドキュメンタリー『ナニワのシンセ界』初上映

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映画『ナニワのシンセ界~The New World of Synthesizer in Osaka』より



YMOや冨田勲といったミュージシャンを輩出し、「ROLAND」「KORG」「YAMAHA」など世界的に有名なメーカーを持つ「シンセサイザー先進国」日本のなかでも、大阪のシンセサイザー・シーンに初めてフォーカスをあてた異色のドキュメンタリー『ナニワのシンセ界~The New World of Synthesizer in Osaka』が2014年8月24日(日)渋谷アップリンク・ファクトリーでプレミア上映が行われる。大阪で活動する電子系のアーティストやイベントの模様、大阪から世界に展開するシンセサイザー・メーカー、個性的な楽器店やシンセサイザーの音をBGMに営業する蕎麦屋といったスポットにカメラを向けたのは、自らも音楽制作に携わる大須賀淳監督。大須賀さんは自身初のドキュメンタリーのテーマを大阪のシンセ・シーンにした理由を次のように語る。




「私自身がかねてからシンセサイザーのマニア(笑)でずっと愛しているのですが、今作のメインで取材した大阪のシンセサイザー・メーカー、REONの社長の荒川さんが作っているシンセサイザーと出会う機会があったんです。REONはマニアの間でも評判だったものの、すぐ店で買えるものではなかった。たまたま東京のイベントにREONが出店することになり、そこで初めて対面したのですが、今まで見たことのない特徴があって、そうしたシンセの魅力をまとめて紹介したいと思うようになりました。そして、現在世界的にデスクトップ・ミュージックや電子楽器の界隈でシンセサイザーが盛り上がってると言われているのですが、日本のシーンについてはまとまったかたちで映像になっていない。海外では『MOOG』『メロトロン・レジェント』など楽器を題材にしたドキュメンタリーはありますが、だいたい日本はスルーされてしまうので、ぜひ僕が映像にしたいという気持ちが芽生えてきました」



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『ナニワのシンセ界~The New World of Synthesizer in Osaka』の大須賀淳監督


大須賀さんは今年の2月から6月まで大阪に撮影を敢行。取材のなかで大阪という地域がなぜシンセサイザーのメッカとなっているのかを肌で感じたという。



「シンセサイザーのメーカーの方、ミュージシャンの方などにインタビューをしていくなかで、それぞれご自身の好きなものに対しての追求が一色ではないんです。マニアックに内に篭っているわけではなく、かといって他に流されてもいない、ちょうどいい距離感で個々の存在が繋がっているシーンがある。その大阪という地域のちょうどいい距離感が作用して、現在のシーンが生まれているんじゃないかと感じました」



今作では、大阪発信のシンセサイザー・メーカーの歴史はもちろん、そうした大阪の地域性についても触れられているだけでなく、現在進行形で活動している若手アーティストの言葉もフィチャーしている。



「一部のマニアや30代以上の世代の盛り上がりだけでなく、若い人にもこの面白さを継承して、日本のシンセ・シーンが繋がっていってほしいというのがあります。この作品を契機に、大阪や他の地域で自分で演奏してみたり、体験に繋げていってもらえたら嬉しいですね」




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『ナニワのシンセ界~The New World of Synthesizer in Osaka』より



コードの差し替えやツマミの操作により一度鳴った音を再現することさえ難しいくらい手間のかかるアナログのシンセサイザー。テクノロジーの発展そしてダウンサイジングの流れと同時に、今作で紹介されているようなアナログ・シンセ回帰の波が訪れている理由について、大須賀さんは次のように分析する。



「映像制作も音楽もどんどんものが減っていっている状況があって、シンセサイザーもかつては大きな機械がなければできなかったのが、マニアックに見ると出音が違うとも言えますが、ほぼ同じことがiPad一枚でできる。手の上のiPadで収まってしまう素晴らしさもあるのですが、シンセのサウンドが手軽に手に入るようになっても音楽自体は拡大しているとは言いがたい。そして、電子音楽以外でも消費される速度は早くなっています。そんななかで、シンセサイザーの分野でいえば、従来であれば面倒くさい作業が必要なこうした機材が見直されて、その面白さに気付き始めている。人が汗をかいて目の前でやっている面白さ。そういったことに体験したことのない世代がびっくりしているし、今回のリバイバルであらためて思い出した世代もある。消費しきれない得体の知れぬパワーが生まれる瞬間がいま起こっているんです。シンセに対するある種の物質性、身体性が大阪の土壌ともマッチしているのかなと思います」



ここ数年で「KORG」など大手メーカーもアナログ回路のシンセサイザーを復刻し発売するなどの動きが確実に生まれているなか、今作は英語字幕の作業も進められ、海外でのDVDリリースや上映も準備が進められているという。海外のシーンへ大阪のシンセサイザーをめぐる状況を知ってもらうことで、逆輸入的に大阪のシンセ・シーンを認知してもらいたいという狙いもそこにはある。「コンピューター1台で済むところには憧れは生まれにくい」そう語る大須賀さんは、今作で自身が憧れ続けてきたシンセサイザーの世界を、日本の誇る電子音楽技術とそこにかける人々の思いを伝えたいという思いで、この『ナニワのシンセ界』をまとめあげている。




(インタビュー・文:駒井憲嗣)



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『ナニワのシンセ界~The New World of Synthesizer in Osaka』より










大須賀淳 プロフィール



映像・音楽クリエイター。スタジオねこやなぎ代表 1975年生まれ。福島県出身。 株式会社スタジオねこやなぎ代表取締役。音楽・映像クリエイター。会社勤務後、フリーの音楽・音響クリエイターとしてキャリアをスタート。各種の制作と同時に大手楽器メーカーの製品開発にも携わり、参加した製品は現在も世界中のスタジオ等で数多く使われている。2009年に「株式会社スタジオねこやなぎ」を設立し、代表取締役に就任。映像・音楽コンテンツ制作と同時に、書籍や雑誌での執筆、学校・セミナー等での講師も数多く務める。2014年、アナログシンセサイザーの復興の兆しを見越して、モジュラーシンセサイザーの情報サイト「モジュラーシンセ日本」を開設。運営を手がける。日本初のシンセサイザー・ドキュメンタリー映画『ナニワのシンセ界~The New World of synthesizer in Osaka』を完成させる。

http://studionekoyanagi.jp/









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日本初のシンセサイザードキュメント映画

『ナニワのシンセ界』世界初上映+トーク&ライブ

2014年8月24日(日)渋谷アップリンク・ファクトリー



【1回目】16:30開場/17:00上映開始 トーク&ライブ

【2回目】19:00開場/19:30上映開始 トーク&ライブ

料金:¥2,000(+1ドリンク500円別)

ご予約は下記より

http://www.uplink.co.jp/event/2014/29997



監督:大須賀淳

制作:株式会社スタジオねこやなぎ

出演・撮影協力:荒川伸(株式会社REON)、Unyo303、久次米一弥(天地雅楽)、ピノ作(J.M.T Synth)、西田彩(ゾンビ)、Risa、江夏正晃(marimoRECORDS)、サワサキヨシヒロ、Durusin、yakan、MINE、Makio Gamasawa、Implant4、Studio D.C、nu things、電氣蕎麦、Tokyo Festival of Modular、ほか

2014年/75分/日本




▼映画『ナニワのシンセ界』予告編

[youtube:6W1LZH8T9ho]

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