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この映画は憂鬱な現代を映しだしている─『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』A・ペイン監督語る

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映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』より ©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


『アバウト・シュミット』『サイドウェイ』『ファミリー・ツリー』のアレクサンダー・ペイン監督の『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』が2月28日(金)より公開される。100万ドルの賞金が当選したという詐欺を信じ込む父親ウディと、彼を連れて旅に出る息子デイビッドとの騒動を通して、家族とのつながりを描く味わい深い物語となっている。ペイン監督に製作の経緯や、ウディを演じカンヌ国際映画祭で最優秀主演男優賞を受賞したブルース・ダーンとの撮影について聞いた。なお今作は、本年度のアカデミー賞では、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、助演女優賞、撮影賞の6部門にノミネートされている。




人生そのもののような脚本




──最初に、ボブ・ネルソンが執筆した脚本を初めて読んだ時の印象を教えてください。彼は、高齢者たちが出版社の情報センターへインチキの商品を受取に現れた、という実話をきっかけに、自身の家族の体験を盛り込み、この物語を作り上げたそうですね。



この美しい脚本を最初に受け取ったのは、2004年のことだった。ユーモラスで哀愁が漂っていて、まるで人生そのものだと思ったね。それにボブ・ネルソン自身の体験も織り交ぜてあったから、脚本家が物語の中の世界に実際に暮らしているようで、とてもパーソナルに感じられるところも気に入った。だけど、ちょうど『サイドウェイ』が完成間近の頃だったから、続けてロードムービーを撮るつもりはなかったんだ。それで、この脚本をしばらく預かることにした。



NEBRASKA

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』のアレクサンダー・ペイン監督


──2011年に『ファミリー・ツリー』で成功を収めた後、ついに本作に取り組むことにしたのですね。脚本を9年間寝かせていたということは、不安ではありませんでしたか。



9年の歳月が経っていたけれど、この脚本に対する僕の愛情は、決して消えることはなかった。それに、非感傷的で成熟したこの物語を映画化するのは、むしろ今こそがベストなタイミングだと気付いたんだ。僕たちがこの作品に取り掛かるまでに、世界では様々なことが起きた。実社会の方が追い付いて、これこそが現代の“憂鬱な時代”を描いた物語だと感じたんだ。どんな映画も、作られた時代の空気を帯びると僕は思う。時代の風というのは、意識的であれ無意識的であれ、作品の中を流れているものなんだ。





──アメリカの原風景とも言える中西部の風景のなかで不器用な父子の旅を描くにあたり、モノクロ映像を選んだのはなぜですか。



本作を作るにあたって、モノクロで撮ることは真っ先に決めたことだ。最初に脚本を読んだ時から、ずっとモノクロをイメージしていたから、この作品にとって、とにかく正しい選択だと思ったんだ。この控え目で飾り気のない物語と、登場人物たちの人生を描くには、荒涼として平坦で直接的なビジュアル・スタイルがうってつけなんだ。それに以前からずっと、モノクロ作品を作りたいと考えていた。モノクロ映画は真に美しい形式だ。



NEBRASKA

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』より ©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.



ブルース・ダーンとの信頼関係



──100万ドルに当選したというインチキに騙されて、住んでいるモンタナ州から1,500キロ離れたネブラスカまで4つの州を越えてはるばる出かけようとするウディと、彼に愛想をつかし毒舌を吐く妻のケイト、そして、それまで距離を置いていた父の望みを叶えようと車での旅を企てる息子デイビッド。2002年の『アバウト・シュミット』をはじめ、監督はこれまで故郷であるネブラスカ州での多くの作品を撮影してきていますが、このグラント一家を巡る物語を強い思い入れのあるネブラスカで撮影できたことには、どんな意味がありますか。



ネブラスカ州で撮ることで、より一層深く物語に踏み込むことができた。いろいろな意味で、アメリカのどの場所で撮影しても物語は成り立つけれど、僕がよく知っている場所になったことで、映画にたくさんのディテールを持ち込むチャンスができた。僕はネブラスカ州のオマハ出身だけれど、主人公のグラント一家の出身地よりはずっと都会だから、ネブラスカ州の田舎を探索する機会は、エキゾチックと言ってもいいもので、とても楽しかったよ。



──決して多くを語りませんが、周りの言うことを聞かず懸賞金が当たったことを頑固に信じて、生まれ故郷のネブラスカに赴くウディ役のキャスティングには、非常に悩んだそうですね。



最初にブルース・ダーンと決めた後、あらゆる可能性を考え直した。その間ずっと、娘のローラが僕に電話してきて、「パパをキャスティングして!」ってうるさかった。それで決めたわけじゃないよ(笑)。最終的に、やっぱりブルースだと確信した後は、決して後戻りはしなかった。




NEBRASKA

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』より ©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


──ブルース・ダーンはこれまで、反逆的な人物や殺し屋などの役どころで知られてきましたが、今回のウディはまったく異なる役柄ですね。撮影前に、ダーンとはどんな話をされたのですか。



僕とブルースとの仕事の仕方は、早いうちから信頼関係を築くというシンプルなものだった。撮影がはじまる何週間も前から、僕たちは一緒にブラブラしては様々なことを話し合った。ただ、この映画についての話だけは除いてね。それで撮影開始の頃になると、全てはごく自然に流れていったよ。





──夢見ることはとうに終えたけれど、それでも「幸運」と自分の生き方を貫き通そうとするウディというキャラクターについて、ダーンの役作りはどうでしたか。



これまでの経験で培われた独創性を生かしつつ、そこからさらに進んで、人間臭い面と人並み外れた面の両方を持って楽しそうに役にのめり込んでいくブルースを見ることができたよ。俳優としてどのようにウディにアプローチするかは、ブルース次第だった。ブルースはウディを、毎時間20分くらいかけて物を調べるような男だと分析していた。ブルースは僕が求めていた、相反する資質の全てを、ウディに持ち込んでくれた。ブルースは気難しいかと思うと、同時に軽妙さも表現できるんだ。僕がブルースに何よりも感謝しているのは、彼が僕を信頼してくれたことだ。どんな監督にとっても、それは驚くべき贈り物だ。彼はどんなことにでも挑戦した。ある時、車の中で、僕の演出はただ「痛ましいボロ雑巾みたいな感じでいてください」と言っただけだったけれど、ブルースはまさにそのとおりにやってくれたんだ。



NEBRASKA

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』より ©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


──では、父との旅を通して家族の絆を再び築こうとする実直で息子のデイビッド役のキャスティングについても教えてください。これまでコメディにたくさん出演してきたウィル・フォーテを起用した理由は?



デイビッドも僕にとって、大切なキャラクターだった。僕自身、ふたりの老いた両親がいるから、デイビッドと共感することができた。もちろん、デイビッドと全く同じ境遇というわけではないけれど、同様の感情は理解できる。この物語で僕がとても気に入ったことのひとつは、父親に威厳を持たせようとデイビッドが望んでいるところだ。このテーマは僕にとって重要だし、パーソナルなものだった。デイビッド役はオーディションで選んだけれど、ウィル・フォーテには即座に納得させられたよ。彼を信じたんだ。ウィルは誠実さと優しさを伝えてくれるけれど、同時にダメな感じもある。僕たちはウィルの演技を見て、ブルース・ダーンとジューン・スキッブから、こういう人間が生まれただろうと心底感じることができたんだ。



(本国プレスより)












アレクサンダー・ペイン プロフィール



1961年、ネブラスカ州オマハ生まれ。祖父はギリシャからの移民。スタンフォード大学で歴史とスペイン文学を学んだ後、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の映画科で修士号を取得する。卒業作品『The Passion of Martin』がサンダンス映画祭で上映され、早くから注目される。1996年、『Citizen Ruth』で長編映画監督デビューを果たす。続くリース・ウィザースプーン主演の『ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ!』では、全米脚本家組合賞、ニューヨーク映画批評家協会賞の最優秀脚本賞を受賞、アカデミー賞脚色賞にノミネートされる。名優ジャック・ニコルソンを主演に迎えた『アバウト・シュミット』は、カンヌ国際映画祭のコンペティションでプレミア上映され、ゴールデン・グローブ賞脚本賞を受賞すると共に監督賞にノミネート。日本でリメイクされたことでも知られ、全米で大ヒットした『サイドウェイ』では、アカデミー賞脚色賞に輝いた。ジョージ・クルーニー主演の『ファミリー・ツリー』でも同じく脚色賞を受賞する。













NEBRASKA

映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』より ©2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.



映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』

2014年2月28日(金)、TOHOシネマズ シャンテ&新宿武蔵野館ほかにて全国ロードショー!



“モンタナ州のウッドロウ・グラント様 貴殿は100万ドルに当選しました”──誰が見ても古典的でインチキな手紙を、すっかり信じてしまったウディは、はるか彼方のネブラスカ州リンカーンまで、歩いてでも賞金を取りに行くと言ってきかない。息子のデイビッドは、大酒飲みで頑固な上に年々思い込みが激しくなっていくウディとは距離を置いていた。だが、母と兄に止められても決して諦めようとしない父を見兼ね、骨折り損だと分かりながらも彼を車に乗せて、4州にわたる旅へ出る。行く先々で騒動を起こすウディのおかげで、旅は回り道ばかり。途中に立ち寄ったウディの故郷で、賞金をめぐる騒動に巻き込まれながらも、デイビッドは想像すらしなかった両親の過去と出会うのだが──。



監督:アレクサンダー・ペイン

製作総指揮:ジョージ・パーラ、ジュリー・M・トンプソン、ダグ・マンコフ、ニール・タバツニック

製作:アルバート・バーガー、ロン・イェルザ

出演:ブルース・ダーン、ウィル・フォーテ、ジューン・スキッブ、ステイシー・キーチ

脚本:ボブ・ネルソン

撮影監督:フェドン・パパマイケル

美術:デニス・ワシントン

衣装:ウェンディ・チャック

編集:ケビン・テント

音楽:マーク・オートン

2013年/アメリカ/115分/英語/シネマスコープ/B&W/ドルビー・デジタル

原題:NEBRASKA

提供:東宝、ロングライド

配給:ロングライド




公式サイト:http://nebraska-movie.jp/

公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画ネブラスカ-ふたつの心をつなぐ旅/1434185190127735

公式Twitter:https://twitter.com/nebraska_movie




▼映画『ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅』予告編


[youtube:SGZxGQhZlCk]

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