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女子として育てられた監督自身の半生を本人と母親2役で映画化『不機嫌なママにメルシィ!』

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映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM



フランスの国立劇団コメディ・フランセーズ出身で、『イヴ・サンローラン』などでもバイプレーヤーとして活躍する男優ギヨーム・ガリエンヌが自らの半生を描いた戯曲を映画化した『不機嫌なママにメルシィ!』が9月27日(土)より公開される。心酔する母親に女の子として育てられた少年ギヨームが、様々な経験を経て俳優として成長していくまでを、監督・脚本のほかギヨーム役と母親役の2役を演じ描出している。今回webDICEでは、ギヨーム・ガリエンヌによるプロダクション・ノートを掲載する



■戯曲から映画化への経緯




本作は、舞台劇としてつくられたものを映画用に翻案したものだ。舞台での笑いのすごいこと、それに芝居がはねたあと、ぼくの楽屋を訪ねて来てくれる人たちの数もまたとんでもなくて、これならもうちょっといけるんじゃないかと思っていた。映画に翻案してみるのはどうかなって。なんて妄想!だって、舞台と同じようにすべての役をひとりで演じるなんて……。エディ・マーフィが『ナッティ・プロフェッサー/クランプ教授の場合』でやったように、自分も同じことができるんじゃないかなんて考えるのは、誇大妄想もいいところじゃない!?



不機嫌なママにメルシィ! サブ1

映画『不機嫌なママにメルシィ!』のギヨーム・ガリエンヌ監督



『不機嫌なママにメルシィ!』が舞台にしか存在しないというのは、ぼくにとってフラストレーションが溜まることだった。ぼくはこの作品を、映画として見ていたからだ。ママがあんなにも活気にあふれて生き生きとしているのはなぜなのか、もっと近くから観察し、もっと強くママのことを感じたかった。舞台の上では見えてこない細部を明らかにすることによって、そこから単なる笑い以上のものを引き出したかった。




舞台では、ぼくはすべての役をひとりで演じたけれど、映画では、ギヨームとママの役を演じることになる。これらの役については、もうすでに15年もの間にわたってリハーサルを繰り返して、しかも40年間もずっと磨きをかけ続けてきたわけだ。






■自らの出自を描いたストーリーについて




【STORY①】「開演5分前」の声に、ステージへ向かうギヨーム・ガリエンヌ。俳優としての成功を手にした彼は今日、ハプニングとサプライズの連続だった自らの青春時代を演じる。最初の台詞は、「ママ」。なぜかいつも不機嫌だけれど、この世でいちばん大切な人だ。満員の観客席を前に、ギヨームの物語が始まる──。




ぼくは裕福なブルジョワ家庭の出身だ。奇妙で風変わりで、コスモポリタンで、どんな猥雑なことであっても、すべてを合理化してしまうような。その社会の中では、たとえちょっと暴力的だと思えることも、不平や不満を言うことはできない。どんなに残酷だったり野卑で破廉恥なことであっても、上品に繊細に表明することが求められる。人を笑わせるにも感動させるにも、媚びへつらうことなく、優雅であることが必要とされるんだ。映画化にあたっては、ブルジョワ階級に属する人間が、どんなふうにして舞台に立つまでになったのか、とんでもなくエレガントなその脱皮と道程を観客と共有したかった。



この映画が描くのは、ありきたりの真実じゃない。ぼく自身の真実だ。どんな恋愛経験から、ぼくが形成されたのか。それが役者になるにあたってどんなふうに作用したのか、その心の秘められた部分を誠実に語る映画なんだ。もしかしたら、悲劇的な結末に終わっていたかもしれない。けれど、幸いなことに冒険は成功し、ちょっとおかしくてシュルレアリスム的なところすらある作品に仕上がった。


 
不機嫌なママにメルシィ! サブ4

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM






■現代の舞台のシーンと少年時代のシーンを交錯させる演出



シュルレアリスム的と言えば、この映画でのぼくは、瞬時に少年時代から現在に移ったり、男から女へも変わる。しかもある場所から次の場所へと瞬間移動したりもする。どんなふうにしてぼくが今いるところに至ったのかを語ること。幻惑するのかそれとも幻滅させるのか。舞台から舞台へ、瞬時に場面転換ができる映画ならではの愉しみによって、この冒険物語のそれぞれのエピソードをより印象深いものにできたと思う。



これこそ、映画の愉しみであり魔法だよね。ぼくの記憶のなかにある出来事であり、そのとき経験した感情がシーンに反映する。幸福な瞬間だったのか、恐怖を感じているときだったのか、セット、照明、衣装……それらすべてが協調することによって、映画のなかのギヨームの世界を形づくってゆくんだ。



映画のもっともステキなところは、視線の定まらない眼差しや細かな仕草、突飛な表現など、一瞬にして過ぎ去っていくものをじっくりと見せられることだ。喜劇的状況にぴったりのテンポを与え、セリフによって豊かな人間的感情を引き出すわけだね。でも、そこでもっとも重要なのは身体演技であり、それがあって初めて、その人物をよりよく感じることができる。




不機嫌なママにメルシィ! サブ3

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM



この映画の美学的な部分については、舞台の悲痛なユーモアを、より効果的に見せることに主眼をおいた。それとは逆に、ギヨームの頭のなかにあるものを演じるに際しては、視線や所作、それにセリフはそのままでも、視覚的に行き過ぎと思えるような演出を施すことによって、力強くドラマティックなものとなり、さらに笑いを呼ぶきっかけをつくろうとした。



ぼくはぼく自身が創造したキャラクターに固執した。この映画を見るのは、ちょっと奇妙な体験だ。稀なことなのだけれど、もういちど劇のなかで自分の人生を生きているようにも感じる。でもまあ、それも悪くはないね。ぼくはぼく自身の物語を語るために存在しているわけなのだから。








■子どものころからお手本だった母への愛情




【STORY②】3人兄弟の末っ子で、ママに女の子のように育てられたギヨームは、ゴージャスでエレガントなママに憧れ、スタイルから話し方まですべてママを真似していた。兄弟や親戚からは100%ゲイだと思われていたが、なんとか息子を男らしく方向転換させたいパパに、無理やり男子校の寄宿舎に入れられてしまう。


 

これは、女性に対する真実の愛の告白だ。とりわけママに対するね。ぼくが子どものころ、ママは僕ら3人兄弟にこう言った──「男の子たちとギヨーム」って。厳しくて並外れたところのあるママが、いつもこんなふうに、ほかの兄弟とぼくとを区別して呼んでくれるたび、ぼくは自分が特別な存在だってことを確信できた。「男の子たち」っていうふうに十把一絡げにされるのじゃなく、ひとりのなにか特別な個人として見てもらえていると思えたんだ。


 

子どもの頃のぼくは、とにかく女の子のように振る舞おうとしたけれど、そのモデルはママをおいてはいなかった。それが、ぼくが演技を始めた最初であり、ママを真似ることから演じ始めたんだ。次第にぼくは、ママと同じ声、同じ振る舞い、同じ仕草を身につけていった。なよなよしていったわけじゃなく、女性に、それもママになりきっていったんだ。やがて、女性のすべてがぼくを惹きつけるようになった。それがぼくにとっての女性に対する愛であり、我を忘れるように魅惑されていった。舞台では見せきることができなかったママの優しさや優美さを、映画のおかげでようやく、ぼくは取り戻すことができたんだ。




映画『不機嫌なママにメルシィ!』 ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM






■コメディ映画としてのスタイル



【STORY③】寄宿舎でイジメにあったギヨームはイギリスの学校に転校、親切にしてくれた男子生徒への初恋に破れ、人生最初の絶望を味わう。自分のセクシュアリティを見極めようとトライしたナンパも、とんでもない結末に。うまくいかない人生に疑問を感じ始めたギヨームは、“本当の自分”を探す旅に出る……。



映画では、とにかくテンポのよいコメディになるよう目指した。笑いが弾けるようなセリフやシチュエーションがつながり合って、ぼく自身の物語が紡がれてゆき、それにしたがって観客の目の前で丸裸にされてゆくような恐怖を感じることもある。でも感動を呼び込むためには、誠実じゃないとダメだと思うんだ。きっと、それぞれ心の奥底で共感してくれるんじゃないかと思う。そして、不意に涙腺を緩めてくれることだってあるんじゃないかと思う。




不機嫌なママにメルシィ! サブ2

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM



コメディ映画における最高におかしな瞬間は、主人公がどんなふうにして茫然自失状態に陥るかにかかっている。ある物事を受け止め、どうそれに反応するか。ところが、彼がやることなすこと、ことごとくが的外れで、しかもまったくその間違いに気づいていなかったりするときほど、滑稽な瞬間はない。こうした瞬間は、当然のこと本作にも存在している。主人公は、最初は女の子でいようと真剣に悩み、次にはホモセクシュアルだと思い込み、それらしく振る舞おうとする。ぼくが演じる人物=ギヨームは、おかしなシチュエーションに陥るわけだけれど、それは同時にとても滑稽なものでもあるんだ。



映画『不機嫌なママにメルシィ!』 ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM


■主人公ギヨームのアイデンティティ探しの物語



訳の分からない理由で人と区別されてしまい、それに右往左往するような本来は受け身な男なのに、逆に彼があくせく動くことによってもがき苦しんでしまう。演出の肝は発想を逆転させたことにあると言えるかもしれない。物語が進み、ギヨームが男として、また俳優として、新たなステージに飛び込もうかどうしようかという瀬戸際にいる瞬間、彼のアイデンティティ探しの最高のハイライトとなるような、なにか突拍子もない、でも観客にも十分納得できるような演出ができないものかと考え続けていた。最も心の奥底にある秘められたものと、最高にユーモラスなものとを融合させられないものか。ギヨームとママとの特別な絆を描くと同時に、ホロリとさせることができないものかって。



これは、パリかどこかのカフェで、カップルが別れてゆくのをじっと見ているような映画じゃない。女の子と思われたり、ゲイだと思われたり混乱したセクシュアリティを抱えていたギヨームが、あちこちで本物の冒険を繰り広げながら、運命を切り開いてゆこうとする映画なんだ。







(プレスより引用)











ギヨーム・ガリエンヌ(Guillaume Gallienne) プロフィール



1972年2月8日、パリ近郊のヌイィ=シュル=セーヌ生まれ。19歳のとき、最大の彼の理解者だった従姉妹のアリシアが若くして突然亡くなったのをきっかけに、自分の将来を演劇の世界に定め、フロランの演劇学校へ。05年よりコメディ・フランセーズの正規団員として数々の舞台に立つ。舞台活動に並行して、90年代より映画にも『タンゴ・レッスン』(97年)などに出演を重ね、2000年には大ヒット作「Jet Set」に出演したことをきっかけに、映画の世界でもその名を知られる。その後、『花咲ける騎士道』(03年)『モンテーニュ通りのカフェ』(06年)『オーケストラ!』(09年)で好演を見せ、ソフィア・コッポラの『マリー・アントワネット』(06年)にも出演。同時にダンスにも傾倒し、フランスを代表するソリスト、シルヴィー・ギエムとの親交から、バレエに関するブックレットを執筆。加えてバルザックの「幻滅」をバレエ用に翻案したりもしている。08年、自身の子どものころに材を採った『不機嫌なママにメルシィ!』を舞台劇に仕立てて自作自演し、大評判に。これにより10年モリエール賞を獲得。さらに13年には自ら映画化して大ヒットを飛ばし、セザール賞10部門にノミネートののち、最優秀作品賞をはじめ5部門を獲得し、世界にその名と才能を知らしめた。2014年にはジャリル・レスペール監督の『イヴ・サンローラン』に出演。













映画『不機嫌なママにメルシィ!』 ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM

映画『不機嫌なママにメルシィ!』より ©2013 LGM FILMS, RECTANGLE PRODUCTIONS, DON’T BE SHY PRODUCTIONS, GAUMONT, FRANCE 3 CINEMA, NEXUS FACTORY AND UFILM




映画『不機嫌なママにメルシィ!』

9月27日(土)より 新宿武蔵野館ほか全国順次公開





監督:ギヨーム・ガリエンヌ

出演:ギヨーム・ガリエンヌ、アンドレ・マルコン、フランソワーズ・ファビアン、ダイアン・クルーガー、レダ・カテブ ほか

脚本:ギヨーム・ガリエンヌ

共同脚本:クロード・マチュー、ニコラ・ヴァシリエフ

製作:エドゥアール・ヴェイユ、シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン

撮影:グリン・スペーカールト(SBC)

編集:ヴァレリー・デセーヌ

音楽:マリー=ジャンヌ・セレロ

美術:シルヴィー・オリヴェ

衣装:オリヴィエ・ベリオ

特殊メイク:ドミニク・コラダン

原題:Les garcons et Guillaume, a table!

2013年/フランス、ベルギー/87分/フランス語、英語

協力:アンスティチュ・フランセ日本、ユニフランス・フィルムズ

配給・宣伝:セテラ・インターナショナル



公式サイト:http://www.cetera.co.jp/merci/

公式Facebook:https://www.facebook.com/fukigennamama

公式Twitter:https://twitter.com/fukigennamama





▼映画『不機嫌なママにメルシィ!』予告編

[youtube:2aj95m9XXBo]

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