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Channel: webDICE 連載『DICE TALK』
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平凡な韓国の主婦がカリブ海の島にある刑務所に投獄─実話を映画化『マルティニークからの祈り』

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映画『マルティニークからの祈り』より ©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.


麻薬密売の容疑により2年にわたりフランスの刑務所、そしてフランスの海外領カリブ海のマルティニーク刑務所に拘留された韓国人女性の運命を描く映画『マルティニークからの祈り』が8月29日(金)より公開される。主人公の主婦を『シークレット・サンシャイン』で第60回カンヌ国際映画祭の主演女優賞に輝いたチョン・ドヨンが迫真の演技を見せている。今回は女優出身で、その演出力に定評のあるパン・ウンジン監督のインタビューを掲載する。



近すぎて分からない家族の大切さを描く




──本作を製作することになったきっかけは?



はじめはこの、地球の反対側にある人里はなれたマルティニーク刑務所に収監された韓国の平凡な主婦の切ない事情に心がひかれたし、残っている家族たちは果たしてどうなっただろうかという気がして、もっと深く知りたくなりました。映画よりも映画のようなことが起こるのが現実です。



家族にも会えず、愛する家族のもとへ帰れないことがまさに監獄なのではないでしょうか?家族が心を楽にして思うままに笑って暖かい家を持つということが、どれほど大切で貴重なことなのか、この映画を通じて描き出したかったのです。この家族の話を通じて、今皆さんの周りの身近で小さな幸せについて改めて考えてみることのできる機会になればと思います。



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映画『マルティニークからの祈り』のパン・ウンジン監督


──実際の事件を映画化する際にフォーカスした点は?



ひとりの女性の事情にも映画的な素材として魅力を感じてはいましたが、一方で「じゃあ彼女の家族はどうなったんだろう?」「夫はどうなったんだろう?」「それが自分のせいだったとしたら?」といろいろ考え始めました。それで、2年という長い時間、悪夢のような日々を過ごした彼女が大切な家族のもとに帰るまで、一緒に居る時はあまりにも近くて大切さが分からなかった家族のもとに帰って来るまでの、彼女の日々を描いてみたいと思いました。映画化することで思い出したくもないことを蒸し返されて、ご本人たちが心を痛めないか……すごく悩みました。それでも、この話が誰にでも起こり得る、身近な話だということを観客に感じてもらいたかったのです。



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映画『マルティニークからの祈り』より、主婦役のチョン・ドヨン(右)、夫役のコ・ス(左) ©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.



──主婦役にチョン・ドヨンをキャスティングした理由は?



私は女優出身なので、以前から俳優がその人物を演じ悩んでいる部分も一緒に取り込みたい、その中に、より輝く瞬間があるのだ、と考えています。ドヨンは、あるシーンで私と事前にセリフの打ち合わせをせずに撮影に臨みましたが、私が考えるジョンヨンよりも深みのある演技を見せてくれました。ドヨンという俳優が演じると、実際に本人がそこにいるように見える。そういった場面が多くあり感動的でした。チョン・ドヨンといえば、“演技の神”“カンヌの女王”などたくさんの修飾語がつく女優です。誰でもそんな役者と仕事をしてみたいと思うものです。こうして作品が公開されるまでを振り返っても「彼女がいなかったらこの映画を撮ることはできなかった」と思うほどソン・ジョンヨンを見事に演じきってくれました。



──では、彼女の夫役にコ・スを起用したのは?



コ・スの役どころは家長であり夫であり、服装は作業ジャンパーで既存のコ・スのイメージとは180度違った姿を見せようとすごく努力してくれました。どうしようもないけど憎めないそんな役を消化してくれて、これまでに見てきたコ・スの姿とは全然違うと思います。コ・スは、全ての瞬間を本当によく考えていました。私たちが思っているジョンベという人物像を演じるだけでなく、コ・スが考えた姿を演じてくれました。だから、ジョンべの一瞬一瞬の違った側面はコ・スが探してくれたんです。




実際の刑務所で撮影を敢行




──事件をリアルに描くため、韓国映画史上初めてとなるカリブ海でのロケをはじめ海外での撮影が行われましたが、その成果は?



ソン・ジョンヨンという人物がどうしてそうなったのかを具体的に画面の中に描きたかったので、大掛かりな海外ロケとなりました。私が一番重要な場所として考えていたのは、フランス・パリのオルリー空港です。空港での撮影は分量がとても多いなかで、私たちに与えられた撮影時間はトータル12時間だけ。でもドヨンが素晴らしい演技を的確にしてくれたおかげで、すべて撮りきることができました。



それから実話ゆえに実際の場所で撮影したかったですし、ドミニカでの撮影を選んだ決定的な理由は、刑務所でした。ドミニカ共和国ではたくさんのハリウッド映画が撮影されたりもするのですが、ドミニカ共和国のナオヤ女子刑務所で私たちが撮影できるように許可をくださったんです。この物語にとって刑務所のシーンはとても重要だったので、そこで撮影することにしました。



ドミニカ共和国は主にスペイン語を話します。私はスペイン語は全く分からないので英語が可能なドミニカの演出チームが別途いないといけなかったし、通訳を通じて話をしなければいけませんでした。また、韓国をはじめフランス、ポーランド、ドミニカなど多様な国籍の俳優たちが登場するので撮影現場には5ヵ国語が飛び交う異色の風景がひろがっていました。



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映画『マルティニークからの祈り』より ©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.



──いちばん重点を置いたシーンは?



マルティニーク刑務所に移送されてきたジョンヨンが初めてカリブ海を目の前にするシーンがあります。自分がいる所に海があるという事実さえ知らなかったジョンヨンが浜辺に立つその瞬間、周りには誰もいないことが必要で、これを実現できるのにふさわしいロケ地を探るために努力しました。非現実的に美しい浜辺の姿を通じて、劇中ジョンヨンが置かれる息苦しく孤独な状況と対照的で、少しの間でもジョンヨンにとっての癒しの時間になることを望みました。



(オフィシャル・インタビューより)











パン・ウンジン プロフィール



1965年8月生まれ。女優出身の女性監督。デビュー作『オーロラ姫』を通してその年の韓国映画評論家協会賞など新人監督賞を受賞し、演出力を認められたパン・ウンジン監督。以降、『容疑者X 天才数学者のアリバイ』での纎細な演出力でも高い評価を得た。本作『マルティニークからの祈り』では、切ない事件に巻き込まれた平凡な主婦の胸を締め付けられるような日々を、密度濃く描き出した。












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映画『マルティニークからの祈り』より ©2013 CJ E&M Corporation, All Rights Reserved.



映画『マルティニークからの祈り』

8月29日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国順次ロードショー



2004年10月30日、フランスのオルリー空港でひとりの女性が突然逮捕された。彼女に課せられた罪は麻薬密売の容疑。家族を貧困な生活から救うため「金の原石」と騙され運んだものは、なんと麻薬だったのだ。異国での突然の逮捕劇。言葉も分からず弁解の余地も与えられないまま、祖国から12,400㎞離れたマルティニークの刑務所に送り込まれる。韓国大使館のずさんな対応で裁判さえ開かれない中、韓国で夫は一人彼女を救うため奮闘するのだが……。



監督:パン・ウンジン

脚本:ユン・ジンホ

出演:チョン・ドヨン、コ・ス、カン・ジウ、ペ・ソンウ、コリンヌ・マシエロ

撮影:イ・モゲ

編集:キム・ソンミン

音楽:キム・ジュンソン

原題:Way Back Home

配給:CJ Entertainment Japan

2013年/韓国/131分




公式サイト:http://martinique-movie.com/

公式Facebook:https://www.facebook.com/martinique.movie

公式Twitter:https://twitter.com/CJEJmarketing







▼映画『マルティニークからの祈り』 予告編

[youtube:wP0-1NL2iZ8]

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