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Channel: webDICE 連載『DICE TALK』
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観光では見られないイタリアを活写『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』監督が綴る被写体との距離

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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』より、子守唄を口ずさむ両性具有の車上生活者。 ©DocLab


イタリア・ローマを走る環状高速道路GRAの周辺に住む市井の人々の姿を捉えたドキュメンタリー『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』が公開される。事故現場の救急隊員がその合間を縫って年老いた母親の面倒をみる姿をはじめ、車上生活者、ウナギ漁師など、観光では見ることのできない、個性的な人々の喜怒哀楽あふれる人生を詩的で緊張感あふれるカメラワークで切り取っている。イタロ・カルヴィーノの書籍「見えない都市」にインスパイアされ製作、第70回ヴェネチア国際映画祭で映画祭史上初のドキュメンタリー映画で金獅子賞を受賞した今作について、今回はジャンフランコ・ロージ監督によるディレクターズ・ノートを掲載する。



見えないガイド



私はイタロ・カルヴィーノの小説「見えない都市」を携えて本作のロケーション探しを行いました。これは旅についての本です。私にとって旅とは、困惑のなかで、ある場所とそこに住む人々を、都会生活によって生み出される欲望と結びつけるプロセスであり、それは突き詰めて行くと私たちが自発的に行っていることなのです。「見えない都市」は様々な道筋を辿りながら進行します。私たちは、互いに追いつき、オーバーラップする一連の心理状態をもって内容を理解することができます。その構造は難解複雑で、読者はカルヴィーノの心理状態や、彼の人生に起こった出来事に照らしながら進むことができるのです。長い本作の製作中、高速道路GRAが私をすり抜けていくような気がしたとき、かつてないほど鮮明に、この本が私を前に進ませてくれました。




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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』のジャンフランコ・ロージ監督



環状線



この止むことのない交通量の海と、そこに住む人々。環状線GRAは私たちが把握し考えなくてはならない現実です。一貫性のなさには目を見張るものがあります。路側帯で空の写真を撮るフランシスコ会修道士に、時速120キロで走る車の数メートル先で草を食む羊の群れ……互いの存在に気がつかぬまま、交差する世界。日中、単なる交通システムでしかない環状線GRAは、夜を迎えると夜明けと夕暮れ時にしか見ることのできない激しく絡み合った世界に変わります。情報で埋め尽くされた昼間の光は、固く曲げることのできない現実を立て直してくれます。そして、夕焼けの光の中で環状線GRAの外観は和らぎ、登場人物のあらゆる様相が明らかになるのです。




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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』より、環状線の救急隊員。仕事の合間を縫って年老いた母親の面倒をみている。 ©DocLab



観ること、そして撮ること



私は、映画の演技が好きではありません。それは、カメラにぶちまけるだけのジェスチャーも同じことです。私は撮影の前に、登場人物と彼らのストーリーに近づくため、長期に渡るプロセスを経たいのです。これには数ヵ月を要することもあります。こうして徐々に接近してからでなければ、どの程度の距離を置いて撮影するべきなのか、どのアングルが相応しいのか、どんな構成で撮影するのか分からないのです。遂に撮影すべき時が来たことが分かれば、もう迷いはありません。その瞬間、そこに存在するのは私、登場人物、そして私の手中で姿を消したかのように存在するカメラだけなのです。




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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』より、木の中の「音」世界を研究する、ヘッドホンと殺虫剤で武装した植物学者。 ©DocLab





撮影は、ただ単に動作に命を宿すことではありません。それは時を経て浮かび上がってきた様々な要素を要約する作業なのです。問われるべきは、あるシーンにどのスタイルを用いるべきなのかではなく、適切な距離と登場人物のストーリーの全体像を見つけ出す前に、彼らと過ごさなければならない期間なのです。そうして浮かび上がってくるものは、ただ観察したり演出するよりも、もっと複雑なのです。



(オフィシャル・プレスより転載)











ジャンフランコ・ロージ(Gianfranco Rosi) プロフィール



エリトリア国アスマラ出身、現在はイタリアならびにアメリカ合衆国民。イタリアの大学を卒業後、1985年にニューヨークへ移住。ニューヨーク大学映画学科を卒業後、インド全土を旅し、中編「Boatman(原題)」の製作と監督を務めた。2008年、カリフォルニアで撮影した初の長編作「Below Sea Level(原題)」では、ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ賞ならびにその年の最優秀ドキュメンタリーに贈られるDoc/It賞など数多くの映画祭で受賞。2010年にはメキシコの麻薬カルテルの元暗殺者のインタビューを映画化した「El Sicario, Room 164(原題)」を製作。ヴェネチア国際映画祭の国際批評家賞とDoc/It賞を受賞した。映画の他に、数々の公共広告も監督し、ニューヨーク大学映画学科、ルガノの南スイス応用科学芸術大学、ならびにジュネーブの造形美術大学では客演講師も務めた。











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映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』より、後継者がいないことを嘆くウナギ漁師7代目。 ©DocLab



映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』

8月16日(土)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー




監督・撮影・音響:ジャンフランコ・ロージ

原案:ニコロ・バッセッティ

編集:ヤーコポ・クアドリ

原題:Sacro GRA

配給:シンカ

2013年/イタリア/93分/カラー/デジタル/ビスタサイズ




公式サイト:http://www.roma-movie.com/

公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/ローマ環状線めぐりゆく人生たち/1430924123818276

公式Twitter:https://twitter.com/sacrogramovie







▼映画『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』予告編

[youtube:pxTq899MMxM]




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