映画『オールド・ボーイ』より、主演のジョシュ・ブローリン © 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
「これはリメイクにしたくなかった」と語るスパイク・リーの新作はパク・チャヌク監督が2003年に映画化した『オールド・ボーイ』、原作は土屋ガロン(狩無麻礼)作、嶺岸信明・画のコミック。「いろんな方法で表現できる壮大な物語のひとつの解釈として捉えた。パク・チャヌク監督は素晴らしい作品を作った。だけどこの作品の原点は日本の漫画にある。このことが、この素材を描く新たな方法を探求する機会を与えてくれたんだ」と、パク・チャヌク監督からは独自の方法で映画化してほしいと言葉をもらい、リメイクではなく新たな映画化に挑戦したという。
本作の荒唐無稽な設定があり得るかもしれないとリアルに感じさせられるのは、監禁、監視、拷問、銃乱射といった劇画的な出来事が現実に頻繁に起きるアメリカ社会を舞台に設定を変えているせいかもしれない。
スパイク・リー監督の次回作は、黒人のドラキュラもの『Da Sweet Blood of Jesus』で、リー監督自らキックスターターで製作費のクラウドファンドを行い先頃1億4,000万円程を集め話題になった。
【webDICE TOPICS】
スパイク・リー キックスターターで1.39億円達成
http://www.webdice.jp/topics/detail/3955/
ジョシュ・ブローリンは熟練し、技術があり、知性がある
──あなたは映画監督としてオリジナルな存在です。今回、人々から比べられるであろうことがわかっている題材にどうして取り組まれたのですか?
僕たちが取ったアプローチと、ジョシュ・ブローリンを迎えたことで、僕たちはオリジナルに敬意を示し、自分たち自身の映画で違いを作る必要があった。ジョシュは契約書にサインする前に、許可をもらいにパク・チャヌク監督のところに行った。パク監督はジョシュに、許可を与え、「僕が作った映画をなぞるのではなく、自分自身の映画を作れ」と言ったんだ。ジョシュはさらに、パク監督が許可しなかったなら、この映画を作らなかっただろうと言った。彼はパク監督の承諾なしにやるつもりはなかったんだ。
映画『オールド・ボーイ』のスパイク・リー監督
──ジョシュのような俳優とチームを組むのは面白かったですか?彼は研究熱心で、質問が多い俳優ですよね?
熟練し、技術があり、知性があり、物語を理解する人々との仕事は大きな喜びだ。ジョシュと僕は全てにおいて足並みを揃えて進んだよ。
──彼の仕事は彼に任せ、あなたはほかのことに集中できるから、やりやすかったということでしょうか。
それでも俳優を演出しなくてはならないが、優れた人々だとずっと容易だ。ジョシュはとてもやりやすくしてくれたよ。
──パク・チャヌク監督版とは大きく違うエネルギーがあります。もっと現代的に感じました。韓国版はゆっくり感じましたが、この映画は活動的です。異なる考え方だからでしょうが、あなたのペースの取り方に興味があります。もっと本能的な感じがしました。
僕たちは僕たちの映画を作ったとしか、答えようがないね。前にも言ったように、パク監督は僕たち自身の映画を作ることを条件に許可してくれたんだ。
──本作を監督してみたいと決心させたのは、脚本のどの部分ですか?
マークが素晴らしい脚本を書いたし、ジョシュ・ブローリンと仕事をするチャンスだった。何年も前から一緒の仕事について話していたからね。
映画『オールド・ボーイ』より、エリザベス・オルセン(右)とジョシュ・ブローリン(左) © 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
──韓国版にはなかったもので、原作のコミックから取り入れたかったものはありましたか?扱いたかった、あるいは発展させたかったものは何でしたか?
多くを取り込んだが、ジョシュと僕がこの映画ではうまくいかないと思ったのが、催眠状態だった。オリジナルに敬意を表すが、僕たちの映画でそれがうまくいくとは思えなかったんだ。
ルイジアナ州は撮影で最高の税金控除が受けられる
──映画全部がニューオリンズで撮影されたとは気づきませんでした。NYのチャイナタウンだと思っていました。あの街の様相をどんな方法で変えて見せたのですか?
『オールド・ボーイ』もほかの映画も、ルイジアナ州で撮影する理由は、どの州よりも最高の税金控除が受けられるから。でも、あの街の外観がアメリカのどの街よりも独特なために、ニューオリンズに見えないようにすることは難しかった。とても難しかったよ。ロケーション探しが大変だった。でもあそこがチャイナタウンの裏通りに見えたなら、成功だ。
──見慣れた街角に見えましたよ。ところで、異なるタイプの俳優たちを選んだ理由は?彼らはどんなものをもたらしてくれましたか?
この仕事に最も適した人たちだ。それが映画のキャスティング方法だ。この役をやってもらうなら、誰が最適かということを考える。
──ニューカマーのエリザベス・オルセンはいかがでしたか?
優れた女優だ。素晴らしいよ。それに、『第9地区』(09)のシャールト・コプリーも見事だ。新しい発見であるポムもね。素晴らしいキャストを集められた。
──旧友の一人サミュエル・L・ジャクソンも出演しています。彼への演出はいかがですか?
ただカメラを回すだけだよ!1991年の『ジャングル・フィーバー』以来の仕事だ。コマーシャルでは仕事をしたが、映画では久しぶりだった。でもギャップなど感じなかった。素晴らしかったよ。
映画『オールド・ボーイ』より、サミュエル・L・ジャクソン © 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
──本作は監督のほかの作品とは違って見えます。どのような感覚の映像を望みましたか?
異なって見えるのは、異なる物語だからだ。僕たちは物語と脚本を映像で語る。最近『それでも夜は明ける』(13)を撮影した、優れたカメラマンのショーン・ボビットが彼らしい仕事をしてくれた。
──本作では、彼が監禁される部分がかなり長いです。隔離についてどのような決定を下し、何を目指しましたか?
撮影するのが難しかった。20分近くあるからね。単調になりがちだ。僕は「どうしたら、この長さにもかかわらず興味深い映像を作ることができるのか?」と全員に問うた。20年を表す部分だ。だから時間をかけて、必死に取り組んだよ。
──「自分らしさ」ということを強調されていますが、ジョーが解放された時のショットは常にあれでいこうと思っていたのですか?
脚本を読んで、ジョシュが言ったんだ。ジョーが最初にすることを見つけ出せば、このショットは決まりだとね。すぐにそのショットは思い付いたよ。自然にわかったんだ。
(オフィシャル・インタビューより)
スパイク・リー プロフィール
1957年、ジョージア州アトランタ生まれ。家族の移住先であるブルックリンで育ち、アトランタのモアハウス大学やニューヨーク大学ティッシュ芸術学校で学ぶ。カンヌ国際映画祭ユース賞などに輝いた『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』(86)で監督デビューを飾り、『スクール・デイズ』(88・未)、アカデミー脚本賞候補になった『ドゥ・ザ・ライト・シング』(89)を矢継ぎ早に発表。アメリカのインディーズ・シーンと黒人タレントの役割に変革をもたらした。その後も『モ’・ベター・ブルース』(90)『ジャングル・フィーバー』(91)『マルコムX』(92)『クルックリン』(94)『クロッカーズ』(95)『ガール6』(96)『ゲット・オン・ザ・バス』(96)などの社会意識の強い問題作を発表。さらにヒューマン・ドラマやサスペンスへと作風を広げ、『ラストゲーム』(98)『サマー・オブ・サム』(99)『25時』(02)『セレブの種』(04)『インサイド・マン』(06)『セントアンナの奇跡』(08)『Red Hook Summer』(12)を手がけた。ハリケーン・カトリーナの災害を題材にしたTV作品「When the Levees Broke」(06)と「If God’s Willing and The Creek Don’t Rise」(10)、マイケル・ジャクソンの伝説をめぐる『Bad 25』(12)などのドキュメンタリーも発表している。
映画『オールド・ボーイ』より © 2013 OB PRODUCTIONS,INC.ALL RIGHTS RESERVED.
映画『オールド・ボーイ』
2014年6月28日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー
1993年10月8日、広告代理店重役ジョー・ドーセットの人生は、はてしない悪夢にのみ込まれた。真夜中の街をさまよっていた彼は、泥酔して意識が混濁するなか、見知らぬ一室に閉じ込められてしまったのだ。何者かの監視下に置かれ、ひたすら単調に流れる時間に精神を蝕まれる絶望の日々。理由も分からない監禁生活がついに20年目に突入したある日、ジョーは突然外界に解放された。監禁中に妻殺しの汚名を着せられたジョーは、休む間も惜しんで猛然と動き出す。愛娘ミナとの再会を果たす前に、何としても自分を陥れた男を捜し出し、復讐を成し遂げねばならないのだ。やがて彼の前に姿を現した犯人は、あらゆる人間の良心を捨てた冷酷非情な男だった……。
監督:スパイク・リー
出演:ジョシュ・ブローリン、エリザベス・オルセン、シャールト・コプリー、サミュエル・L・ジャクソン
製作総指揮:ジョー・ドレイク、ジョン・パワーズ・ミドルトン、ピーター・シュレッセル
製作:ロイ・リー、ダグ・デイビソン、ネイサン・カヘイン
原作:[作]土屋ガロン(狩無麻礼)、[画]嶺岸信明
脚本:マーク・プロトセビッチ
撮影:ショーン・ボビット
美術:シャロン・シーモア
衣装:ルース・E・カーター
編集:バリー・アレクサンダー・ブラウン
音楽:ロケ・バニョス
2013年/アメリカ/英語/カラー/シネマスコープ/103分/原題:OLDBOY/R-15
配給:ブロードメディア・スタジオ
公式サイト:http://www.oldboymovie.jp
公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画オールドボーイ/600681236677602
公式Twitter:https://twitter.com/OLDBOY_2014
▼映画『オールド・ボーイ』予告編
[youtube:GcnH79Hr87c]